横暴な亭主であるとこうして衣類を歩く道筋に沿って点々と脱ぎ散らかし、従順な妻がそれを拾い集めて歩くなんてことになるのも珍しくない。ぼくはこんな脱ぎ方はしないし、ステテコなんてものは着用しないのだが、それでも暑い日には子供が男二人という気楽さから、帰宅するとすぐに下着一枚になってうろつき、妻にたしなめられることもないではない。こういう状況から考えるに、日本人は自宅の”内”というものを、どんな格好をしていても許される気楽な場所と見なしているようだが、その心理的契機は上がり栃で靴を脱ぐという行為にありそうだ。
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このことは欧米人と対照させると一層はっきりする。欧米人は靴を履いたままであるせいか、ドアを潜って内に入っても家の外の緊張感がある程度連続している。緊張感というと大袈裟すぎるかも知れないが、少なくとも服装を介して意識される自己の身体感覚が、家の中に入ると途端に一変するということはない。